「金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント
経済的自由があなたのものになる」
ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター 白根美保子訳
筑摩書房 2001
2004/09/18
「習慣こそ情念を支配し得るものである」(三木清、『人生論ノート』、新潮文庫、1941,p.34)。なんと心強い言葉だろう〜。ところで前ページで「心の奥底にある感情的な価値観の違いが、ものの見方の違いを生む」(p.197)という話がちらっと出たが、ここでそれぞれのクワドラントの違いについて改めて見てみよう。
Eの従業員は、とにかく安定を求める。「こういう人は何かを確保することで恐怖心を和らげようとする。だから、仕事を探すときも、安定と、しっかりした約束を第一に考える。彼らはよく「お金にはそれほど興味がない」と言うが、それはほんとうなのだ。彼らにとっては、安定していることの方がお金よりも大事な場合がよくある」(p.35)。
Sの自営業者は、Eと同じように安定を求めるものの、それを約束によって獲得するのではなくて、己の力で得ようとする。「Sクワドラントに属する人は恐怖心が出てくると、保証を求めるのではなく状況をコントロールする力を自分の手に収め、自分自身でなんとかしようとする。私がこのタイプの人を「do-yourselfer」と呼ぶのはこのためだ」(p.35)。
Bのビジネスパートナーはというと、「Sに属する人とほとんど正反対と言ってもいい。(略)仕事を他人に任せるのがきらいな(自分よりうまくできる人はいないと思っているから)Sとは反対に、Bはそうするのが好きだ。Bはよくこんなふうに言う。「人を雇ってそれをやってもらうことができて、しかも自分でやるよりうまくやってくれるとしたら、自分でやることはない」(p.37)。私はEに属しているが、この発想は良く分かる。
Iの「投資家はお金でお金を作り出す。お金が自分の代わりに働いてくれるので、自分で働く必要はない。(略)いまどのクワドラントから収入を得ていようと、いつか金持ちになりたいと考えている人はだれでも、最終的にはこのクワドラントに来なければならない。なぜならお金が富へと変化するのはこのIクワドラントにほかならないからだ」(p.43)。
お金が必要だと思ったとき、Eは自動的に仕事をさがし、Sは自分ひとりで何か始める。そして、Bはシステムを作ったり買ったりしてお金を作り出し、Iはより多くのお金を生む資産をさがして投資をする。(p.167)どのクワドラントが良い悪いという話ではなく、結局は自分のしっくりくるクワドラントはどこなのか、という話なのである。そして今いるクワドラントから移動したいと思ったら、それこそ生まれ変わる必要がある。「お金が必要だ」と思ったときに自動的にとる行動が(まさに「習慣」レベル!)変わるくらい。
たとえば、人に雇われて給料をもらっていると、そうやってお金を手に入れることに慣れてしまう。自営業者として働いていると、そうやってお金を儲けることから離れるのがむずかしくなる。また、政府からの援助に頼ることに慣れてしまうと、そのパターンはなかなか変えられない。
「左側から右側に移るときにいちばんむずかしいのは、それまで自分がお金を稼いできた方法にしがみつく気持ちを断ち切ることだ。それは単なる習慣から抜け出すよりむずかしい。中毒から抜け出さなくてはいけないのだから」(p.166)。
日本はこの数年間、銀行および金融業界で今にも大惨事が起きそうな状態で揺れている。その一方で、日本の銀行はお金をたっぷり抱えている。それは、日本人の大部分が従業員で、お金を貯める人間だからだ。実際のところ、日本人の貯蓄率は世界一だ。銀行にお金があふれているため、貯蓄に対して支払われる利子はほとんどゼロに近い。銀行が顧客の貯蓄に対して何も払わなくても、お金は銀行に預けられたままだ。なぜだろう?その理由は、従業員でお金を貯める人たちは、リスクをとるより、たとえ何も利益を生み出さなくてもお金の方を持っていたいからだ。(『金持ち父さんの予言』、ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター、筑摩書房、2004、p.132)そうはいっても日本でも最近はあちこちで「資産運用〜」という言葉を耳にする。とうとうコンビニで株が買えるというところまできている。確定給付型年金から確定拠出型年金に移行するに伴って、キャッシュフロー・クワドラントの左側の人々が、好むと好まざるとに関わらずIクワドラントに流れ込んできていると著者は言う。EやらSやらのアタマは当然そのままに。
キャッシュフロー・クワドラントの左側に属する人たちが安定を求めてどっと入ってきたので、株式市場もそれに反応し始めた。おかげで次のような言葉を最近よく耳にするようになった。確かに聞くよ!私は株のこと知らないが、分散投資と投資信託は、銀行が盛んに言っているじゃないか。そして次の話は、日本でもそうなのかわからないが、これはとても大切な点と思われる。
1、分散投資
(略)「損をしない」ための戦略(略)。勝つための投資戦略ではない。投資家として成功している人、投資で金儲けをしている人たちは分散などしない。彼らは焦点を定めて投資する。(略)分散ではなく集中させる方法を選ぶには、より賢く、一点に集中した考え方や行動ができる必要があると考えている。
2、優良株
(略)たしかに(優良)企業そのものの安全性は高いかもしれないが、株式もそうだとは限らない。
3、投資信託
投資についてよく知らない人たちは、自分より専門知識があってうまくお金を運用してくれそうなファンドマネジャーにお金を託す方が安全だと思っている。プロの投資家になる気のない人にとってはたしかにこれは一つの賢いやり方だ。問題は、賢い戦略ではあっても、ほかのやり方よりリスクが少ないわけではないという点だ。実際のところ、株式市場が暴落すれば、私が「投資信託メルトダウン(大暴落)」と呼んでいる現象が起こらないとも限らない。(略)(p.59)
金持ち父さんはこんなふうにも言っていた。「アドバイスをする人の能力は、それを受ける人の能力以上にはならない。きみ自身の頭がよくなければ、アドバイスする人もそれ以上のことは教えられない。きみがお金に関してしっかりした教育を受けていれば、有能なアドバイザーはより高度なアドバイスをきみに与えることができる。反対にきみがお金について無知ならば、安全な運用戦略しか教えられない。それは法律で決められているんだ。(略)投資のことをあまり知らない投資家には『分散投資』を勧めることも多い。わざわざ時間をかけてそんな投資家を教育しようなどというアドバイザーはまずいない。(略)だから、きみは自分で自分を教育しなきゃいけない。(p.139)だから銀行が「分散投資!」というのは、アタマそのままのEやらSやらを相手にしなければいけないからかもしれない。「ここでもう一度言っておきたいが、「長期に投資しろ。辛抱強く待て。分散しろ」というアドバイスは、一般的に言って、限られた量のファイナンシャル教育と投資経験しか持っていない人にとっては堅実なアドバイスだ。私が強調したいのは、個人としてみなさんに三つの基本的な選択肢が与えられていることだ。その選択肢は、1.何もしない、2.分散するという昔ながらのアドバイスにしたがう、3.ファイナンシャル教育を受ける、の三つで、どれを選ぶかはあなた次第だ」(『金持ち父さんの予言』、p.89)。
今、ファイナンシャル・プランナーや株式ブローカー、不動産ブローカー、保険のセールスマン、会計士、弁護士といった多くの専門家たちがこぞって、お金と引き換えに投資に関するアドバイスを提供している。金持ち父さんが心配していたのは、こういった人たちの多くが投資家ではないことだ。彼らは真の投資家がそうしているように、投資からの収入で生計を立てているわけではない。金持ち父さんは自分の息子と私に、投資に関するアドバイスを撒き散らす人間の大部分が、手数料や給料、相談料などをとって働く営業マンであることをいつも忘れないようにさせた。金融関係の機関・団体のためにファイナンシャル教育を行っているのはまさにこういった営業マンたちで、彼らのうち大部分が、その機関・団体から「こう言うように」「これを勧めるように」と指示されたことをそのまま言ったり勧めたりするのは当然だ。そうしなければ彼らは仕事を失うのだから…。そんな状況の中で、私たちは、なぜこんなに多くの人たちが将来の自分の経済状態について心配を募らせているのだろうと不思議に思っている。彼らがどんどん不安になっているのは、偏りのない、公平なファイナンシャル教育を受ける代わりに、ファイナンシャル教育の姿を借りた売り込み口上をセールスマンから聞かされているからだ。金持ち父さんがよく言っていたように、「セールスマンがよくブローカーと呼ばれるのは、彼らが往々にして顧客より文無し(ブローカー)だからだ」(『金持ち父さんの予言』、p.94)。